「旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)」とは、1946年に文化庁より公布された「新仮名遣い」に対しての呼称であり、当時を知る方々にとっては義務教育で学んだごく当たり前の日本語でした。つまり、戦後教育によって「旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)」となったわけですから、GHQ主導による戦後教育がどのような内容であるかを知る人にとっては、かなり重要な意味を持つのではないでしょうか? 国語教育や短歌に携わる方々も同様でしょう。
ここでは、「わ」と「は」、「う」と「ふ」について、一覧表つきで解説します。
【旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)】「わ」と「は」の使い分け一覧とチェックポイント
わ | は | |
名詞 | 輪(わ) 訳(わけ) 業(わざ) 我・吾(われ) 私(わたし) 泡(あわ) 轡(くつわ) 廓(くるわ)※① 皺(しわ) 鶸(ひわ)※② 水沫(みなわ)※③ 鰯(いわし) 諺(ことわざ) 理・断・辞(ことわり) 声色(こわいろ) 俵(たわら) 腸(はらわた) | 左記以外は「は」 |
動詞 | 分ける・別ける(わける) 慌てる・周章てる(あわてる) 乾く・渇く(かわく) 断る(ことわる) 騒ぐ(さわぐ) 座る・坐る(すわる) 撓む(たわむ) 弱る(よわる) | 左記以外は「は」 |
形容詞 | 遽し・慌ただし・慌し(あわただし) 騒がし(さわがし) 爽やか(さわやか) | 左記以外は「は」 |
※①廓(くるわ)とは、周囲を塀や堀などで区切ったエリア。遊郭。女人の集まるところ
※②鶸(ひわ)とは、スズメ目 アトリ科 に属する鳥の種類。ベニヒワ・カワラヒワ・マヒワなど
※③水沫(みなわ)とは、水しぶき、水の泡の意味で、儚いことの例えに用いられる。
単語の中や終わりに「ハ行」がある場合
語中や語尾に「ハ行」がある場合、基本的にワ行で、「WA(わ)・WI(ゐ)・WU(う)・WE(ゑ)WO(を)」と発音します。
ハ行の四段活用(は・ひ・ふ・へ)の場合
ハ行の動詞などで四段活用の場合も同じです。
下記活用表をご参照ください。
食ふ(食う) | 言ふ(言う) | 発音 | |
未然形 | 食は-ない | 言は-ない | くわない・いわない |
連用形 | 食ひ-ます | 言ひ-ます | くいます・いいます |
終止形 | 食ふ | 言ふ | くう・いう |
已然形 | 食へ-ば | 言へ-ば | くえば・いえば |
※未然形に「う」が付く場合 | 食はう | 言はう | くおう・いおう |
※旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)の注意点は、表記による印象と実際の発音が異なる点です。上記、ハ行四段活用動詞の活用語尾はワ行で発音しますが、未然形の語尾に「ウ」が付いて意志や呼びかけを表す場合、「わう(WAU」ではなく「をう(おう・WOU)」と発音します。
【旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)】「ふ」と「う」の使い分けのポイント
基本的にア行下二段活用動詞とワ行下二段活用の語には「う」、ヤ行下二段の語には「ゆ」を使います。下記表をご参照ください。
「う」を使う語 ア行下二段とワ行下二段動詞 | 「ゆ」を使う語 ヤ行下二段活用の終止形 | ||
動詞 | 植うる・飢うる(ううる) 得る・心得る(うる・こころうる) 据うる(すうる) | 左記以外は「ふ」 ※耐ふ(たふ) 右記混同注意 | 癒ゆ(いゆ) 怯ゆ・脅ゆ(おびゆ) 覚ゆ(おぼゆ) 聞こゆ(きこゆ) 消ゆ(きゆ) 越ゆ(こゆ) 栄ゆ(さかゆ) 聳ゆ(そびゆ) 絶ゆ(たゆ) 潰ゆ・費ゆ(つひゆ) 煮ゆ(にゆ) 映ゆ(はゆ) 生ゆる(はゆる) 冷ゆ(ひゆ) 吠ゆ(ほゆ) 見ゆ(まみゆ) 燃ゆ・萌ゆ(もゆ) |
名詞音便 | 弟(おとうと) 斯(かう) 格子(かうし) 麹(かうじ) 神戸(かうべ) 蝙蝠(かうもり) 箒(はうき) 日向(ひうが) | 左記のように音便によって長音に転じた語の場合、「う」を用いる。 | |
動詞音便 | 申す(まうす )追うて(おうて) 食うて(くうて) 乞うて(こうて) 候て(さうらふて) 吸うて(すうて) 縫うて(ぬうて) 詣で・参出(もうで) 漸(やうやう) | 左記のように音便によって長音に転じた語の場合、「う」を用いる。 |
「ふ」を「お」と発音する例外事例
「ふ」が語中・語尾にある場合、基本的には「う(U)」と発音しますが、例外的に以下のような場合には「う(U)」ではなく「お(O)」と読みます。
仮名表記 | 読み(発音) | |
葵 | あふひ | あおい |
仰ぐ | あふぐ | あおぐ |
煽る | あふる | あおる |
倒す | たふす | たおす |
語中語尾に「う・ふ」がある場合の読み・発音
語中語尾に「う」や「ふ」を含む場合、その前の文字と合わせた長音を含む語として、三つのパターンがあります。
- 「ア段+う」:おはやう(おはよう)・さうだ(そうだ)・まうけ(もうけ)
- 「イ段+う」:きうり(きゅうり)・しうり(しゅうり)・ちうい(ちゅうい)
- 「エ段+う」:けふ(きょう)・しませう(しましょう)
参照:日本の手習い旧字旧かな入門/府川光男・小池和夫
https://www.jinja.co.jp/kana-kantan01.html
https://seikana.org/yomikata.html