大抵の場合、語の頭以外の「え」は「へ」となりますが、下記表のような例外があります。こうした例外を覚えておけば、旧仮名遣いは難しくありません。覚えきれない場合は、本記事や広辞苑を参照すれば済みます。
現在の語の頭以外の「え」の発音の由来は3つあります。「へ」は元は「フェ(Fe)」と発音されていました。しかし、やがて語の頭以外では「エ(e)」と転呼されました。
もともと日本語において、あ行の「え」は語の頭以外に存在せず、や行の「*え」が遣われていました。表記は同じ「え(Ye)」です。
「ゑ」は元々「ウェ(We)」のような発音でしたが、今では「エ」と同じように発音されています。「へ」と「え」と「ゑ」の使い分け一覧、ご参照ください。
「へ」と「え」と「ゑ」
「へ」 | 「え」 | 「ゑ」 | |
名詞 | 右記以外は「へ」 | 枝・柄・江(え) 干支(えと) 胞(えな) 榎(えのき) 愛媛(えひめ) 烏帽子(えぼうし) 覚(おぼえ) 庚(かのえ) 甲(きのえ) 肥(こえ) 凍え(こごえ) 心得(こころえ) 栄(さかえ) 栄螺(さざえ) 戊(つちのえ) 鵺(ぬえ) 稗・日吉・冷え(ひえ) 孼(ひこばえ) 丙(ひのえ) 笛(ふえ) 見栄・外見(みえ) 壬(みづのえ) 萌黄(もえぎ) | 餌・給(ゑ) 槐(ゑんじゆ) 靨(ゑくぼ) 穢土(ゑど) 礎(いしずゑ) 梢(こずゑ) 声(こゑ) 陶・末(すゑ) 机(つくゑ) 杖(つゑ) 巴・鞆絵(ともえ) 故(ゆゑ) 所以(ゆゑん) |
動詞 | 右記以外は「へ」 | ※ア行下二段活用とヤ行下二段活用動詞の未然形と連用形 得て(えて) 心得て(こころえて)癒えて(いえて) 怯えて・脅えて(おびえて) 覚えて・憶えて(おぼえて) 消えて(きえて) 聞こえて(きこえて) 越えて・肥えて(こえて) 栄えて(さかえて) 耐えて・絶えて(たえて) 費えて・潰えて(ついえて) 煮えて(にえて) 冷えて(ひえて) 吠えて(ほえて) 見えて(まみえて) 燃えて(もえて) | 抉る・刳る(ゑぐる) 酔ふ(ゑふ) 笑む(ゑむ) 彫る(ゑる) 飢ゑる・植ゑる(うえる) 据ゑる・坐ゑる(すゑる) |
形容詞 | ゑぐし |
「へ」と「え」と「ゑ」の使い分け3つのポイント
- 語頭の「エ」はほとんど「え」
- 語頭以外の「エ」は多くは「へ」
- ア行動詞とヤ行動詞は「え」
エ段の音を引き延ばすための拍は「え」
拍をとったり呼びかけや感嘆を表した音便に、「えぇ~}と延ばして表現するケースがあります。この場合、特に由来や根拠があるわけではないので、発音に従ってあ行の「え」を用います。
例:怖え(こええ)・凄え(すげえ)・面白え(おもしれえ)