スポンサーリンク
スポンサーリンク
えほんインク
スポンサーリンク

【石破総理の言ってた七面倒臭い日本語】お洒落・装いの大和言葉|一覧表付詳細解説

大和言葉
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

石破茂総理大臣の仰っていた七面倒臭い日本語についての解説コラムです。そもそも七面倒臭いことが日本なのであって、七面倒臭いからこそ他国の追随を許さない高い技術で世界の経済界をリードし、高貴な精神性で世界の範となってきたのではなかったでしょうか? よく考えて喋りたいものです。

このセクションの語句は、日本の伝統的な装いや美意識、そしてそれに関連する身体の動作や表現に焦点を当てています。これらの言葉は、単なる衣服や化粧の名称に留まらず、当時の生活様式、社会規範、そして美の基準を深く反映しています。

これらの表現は、単なる外見だけでなく、洗練された振る舞いや気風といった内面的な要素が、その人の魅力を構成する上でいかに重要であったかを示しています。こうした歴史の積み重ねがあってこそ、日本という国が築かれたのでしょう。外見と内面が一体となった「美しい日本」を穢さぬよう継承していきたいものです。

大和言葉お洒落よそおい編概論

着物の着こなし方や身のこなし方に関する表現は機能性だけでなく、そこに含まれる「粋」や「たしなみ」といった文化的な価値観を伝えています。例えば、「衣擦れ」や「裾捌き」は、着物が発する音や動きの優雅さを重視する日本の美意識を示唆し、「抜き衣紋」や「端折る」といった着付けの技術は、実用性と美学が融合した伝統的な知恵を反映しています。

人物の容姿に関する表現では、「瓜実顔」や「緑の黒髪」のように、特定の美的基準が言葉として定着しています。これは、時代ごとの理想の美が、言語を通じてどのように継承され、表現されてきたかを示しています。さらに、「垢抜ける」や「鯔背」「伊達者」といった言葉は単なる外見だけでなく、洗練された振る舞いや気風といった内面的な要素が、その人の魅力を構成する上でいかに重要であったかを示唆しています。これらの大和言葉は「美しさ」の概念を日本語がどのように捉えてきたかを物語っています。

【やまとことば】お洒落・装い編一覧表

語句意味印象や表現したいこと用途
身仕舞い (みじまい)身なりを整えること。身支度を指す。身なり全体を美しく整える行為に焦点を当て、社会生活における身だしなみの重要性や自己管理の広範な概念を反映。外出前の服装、髪型、化粧を丁寧に整える行為。
べべ (べべ)着物を指す。地域によっては「びり」(最下位)を意味する場合もある。親しみやすさや愛らしさを伴う響き。子供の衣服や女性の着物を親しみを込めて呼ぶ。
一張羅 (いっちょうら)その人が持っている衣服の中で最も良いもの。または晴れ着を指す。薄手の晴れ着一枚から転じて、最も上等な服や唯一の服を意味。かつての日本で特別な一着を大切にしていた生活様式を反映。特別な日や改まった場所で着用する服。
ぞろり (ぞろり)多くのものが一続きにつながっている様子。また、和服をだらしない感じに着崩しているさま。視覚的な連続性や衣服の着こなしにおけるだらしなさ、過剰な華やかさを表現する擬態語。行列の長く続く様子や着物の裾をひきずる姿。
衣擦れ (きぬずれ)歩くときなどに、着た着物の裾などがすれ合うこと。着物の素材と動きが織りなす音という聴覚的な美意識を捉え、優雅さ、繊細さ、色気といった感覚的な美を表現。絹の着物が擦れ合う音で優雅さや色気を表現。
はだける (はだける)衣服の襟元や裾が開いて乱れること。または、手足を大きく広げる様子を指す。衣服が本来の形から開く状態で、無防備さや色気を表現。寝ている間の布団の乱れや着物の胸元の開き。
かなぐり捨てる (かなぐりすてる)身につけているものを荒々しく取って放り出すこと。また、比喩的に、恥や外聞、自制心などを全部捨て去ること。金具で固定されたものを力任せに外す意味から、感情の爆発や極限状態の行動を力強く描写。怒りのあまり上着を乱暴に脱ぎ捨てる、または体面を捨てて懇願する。
裾捌き (すそさばき)和服で動く際の、裾の取り扱い方。着物の裾が乱れないような足こなしや歩き方。着物の裾を巧みに操る技術が美しさや品格を決定づけ、教養や品位を映し出す。和服での歩行時の裾の扱い方や全体の立ち居振る舞い。
裾を払う (すそ を はらう)相撲の決まり手の一つで、相手の足を払って倒す技。また、着物の裾を払うようにして立ち去る、関係を断ち切るという比喩的な意味。物理的な行動が人間関係や状況からの離脱や清算を象徴。きっぱりとした関係の断ち切り。相撲の技や関係の清算。
褄取る (づまどる)裾の長い着物の褄を手でつまんで持ち上げること。芸者が左褄を取って歩くことから、芸者になることを意味する場合もある。着物の褄を持ち上げる動作が身分や職業、優雅な振る舞いを表現。着物の裾を優雅に持ち上げる動作や芸者になる象徴。
衣紋を直す (えもん を なおす)衣服、特に和服の襟元が乱れたのを整えること。着崩れを直す。襟元を整えることが品格や礼儀を示す日本の美意識と結びつき、社会的な規範に沿った振る舞い。着物の襟元の乱れを整える動作。
抜き衣紋 (ぬきえもん)和服で、首のまわりの襟を後ろに押し下げて襟足が広くのぞくようにする着方。女性の着方として一般的。襟足を抜く技法で首筋を美しく見せ、女性の首筋が美の象徴とされた伝統的な美意識を反映。優雅さや色気を演出。女性の着物で優雅さや色気を表現する着方。
端折る (はしょる)ある部分を省いて短く縮めること。物理的な折り動作から情報や手順の省略へ拡張。簡潔さや効率性を重視するが、くだけた表現。説明の省略や着物の裾のまくり上げ。
たくし上げる (たくしあげる)衣服の袖や裾などを、手で引き上げる、まくり上げる動作。手で引き寄せて上げる動作で、実用的な目的のための衣服調整。目的意識や生活の知恵を示唆。水仕事や泥道での袖や裾のまくり上げ。
しごく (しごく)副詞の「至極」として、その状態・程度がこれ以上はないというところまでいっているさま。極限や極致に達していることを強調する日本語の強調表現。程度の強調や道理にかなった意見の強調。
揉み立てる (もみだてる)激しくもむこと。また、しきりにうながす、せきたてる。揉む動作に立てるが加わり、激しさや盛んさを強調。感情や状況を煽り立てる抽象的な拡張。神輿の盛り上げや人を急がせる。
絡げる (からげる)縄やひもなどで束ねてくくること。また、衣服の裾の一部をまくり上げて帯などに挟むこと。機能性と身体の自由度を表現。荷物の束ねや着物の裾のまくり上げ。
襷がけ (たすきがけ)ひもや縄などを斜めに交差させてかけること。和服の袖をまとめる紐で、作業準備や活発な行動を象徴。家事や作業時の袖のまとめ。
鉢巻き (はちまき)頭に付ける細長い布や紐で、精神の統一や気合の向上のために用いられる。非日常の象徴で、神事や祭りでの精神集中、士気向上、集団帰属意識を示す文化的な記号。運動会、祭り、受験生の着用。
姉さんかぶり (ねえさんかぶり)婦人の手拭いのかぶり方の一つ。額に手拭いをあて、両端を後ろへ回す。女性の日常的な働く姿を連想させる実用性と素朴な美しさ。女性の生活様式や役割を象徴。掃除や日よけのための頭のかぶり方。
頬かむり (ほおかむり)顔の頬を覆うようにして手拭いや布をかぶること。物理的な覆いが身分隠しや責任回避を表現。日本の間接的な対応や察する文化を反映。寒さよけや不正への見て見ぬふり。
けわい (けわい)化粧をすること。また、化粧によって作られた顔つきや表情。顔の雰囲気を変える意味で、化粧の変身の力や自己表現の役割を示す日本の美学。女性が美しく見せるための化粧。
眉をひく (まゆ を ひく)眉墨などで眉の形を整えたり、描いたりすること。眉が顔の印象を左右し、化粧の技術で美しさを引き出す。表情や性格を表現。化粧の一部として顔の印象を整える。
紅をさす (べに を さす)口紅を塗ること。唇に紅を塗って顔色を明るく見せたり、華やかさを加えたりする。化粧で表情に生命感や華やかさを与える美学。唇の化粧で顔全体を明るくする。
髪を撫でつける (かみ を なでつける)髪の毛をブラシや手でなでて頭に沿わせるようにきれいに整えること。髪型が印象を左右し、清潔感やきちんとした印象を与える。品格や社会的な態度を示す。乱れた髪を整えて清潔感を与える。
髪をすく (かみ を すく)櫛やブラシで髪をとかすこと。髪のもつれを解き、整える。髪の手入れが美しさを保つ上で不可欠。清潔感や美意識を表現。日常的な髪の清潔と美しさの手入れ。
お櫛上げ (おぐしあげ)女性が髪を結い上げること。年齢を重ねて髪型を変える節目。髪型が年齢、身分、社会的役割を示す。女性の人生の節目や変化を象徴。結婚式や成人式などの髪の結い上げ。
鬢 (びん)髪の毛の、耳の横のあたり。特に、女性の髪型でこめかみから耳にかけてふくらませた部分。顔の輪郭を美しく見せ、髪型の細部で個性や時代性を表現。美意識の繊細さ。女性の髪型で顔の印象を整える部分。
別嬪・別品 (べっぴん)特に美しい女性を指す言葉。容姿が際立って優れている女性。他の人とは別格の品格を持つ抜きん出た美しさ。美の基準が言葉として継承。美しい女性を褒め称える。
細面 (ほそおもて)顔の輪郭が細く、卵型で、すっきりとした顔立ち。上品で知的な印象を与える顔立ち。優雅さや知性を連想。細く整った顔の輪郭の形容。
瓜実顔 (うりざねがお)瓜の種のように、やや面長で、額から顎にかけての輪郭がなだらかな卵型の顔立ち。古典的な美人の典型。自然物になぞらえた理想の美の言語化。伝統的な美人の顔立ちの表現。
玉肌 (たまはだ)きめ細かく、つややかで、透き通るような美しい肌。宝石のように美しい肌の最大限の褒め称え。美しい肌の形容。
緑の黒髪 (みどり の くろかみ)水に濡れた烏の羽のように、真っ黒で青味のあるつややかな髪。青々とした生命力や若々しさ、深い色合いの豊かな艶。自然の色合いや質感の美。黒髪の艶やかな美の形容。
垢抜ける (あかぬける)洗練されて、野暮ったさがなくなること。外見と内面の成長や経験を通じた品格の変化。美しさの統合概念。服装や容姿、振る舞い野暮ったさが抜けた洗練された状態。
小股の切れ上がった (こまた の きれあがった)女性の脚が長く、スラリとして粋な様子。女性の身体部位が活動性や粋な美学と結びつき、気風や振る舞いを含む。颯爽とした女性の脚の美しさの表現。
鯔背 (いなせ)粋で、勇み肌で、さっぱりしているさま。また、その気風の若者を指す。江戸時代の町人文化の威勢がよく小気味よい男性の気風。活きの良さや髪型に由来。粋な男性の気風や容姿の形容。
伊達者 (だてもの)見栄を張ったり、粋に装ったりすることにこだわる人。服装や振る舞いが派手で人目を引く。外見や振る舞いが個性や美意識、社会的立場を表現。派手な装いや男気を持つ人の表現。

【やまとことば】お洒落・装い編詳細解説

身仕舞い (みじまい)

身なりを整えること。また、化粧をして美しく着飾ること、身支度を指します。例えば、外出する前に、服装や髪型、化粧を丁寧に整える行為。

「身仕舞い」は、単に衣服を着るだけでなく、身なり全体を美しく整えるという行為に焦点を当てています。これは、身だしなみが社会生活において重要視される日本の文化そのものといっても過言ではありません。また、生計の道を整えるという意味合いも持ち、自己管理の広範な概念も含みます。この言葉は、外見を整えることが、社会的な礼儀や自己表現の一環であるという日本の美意識と深く結びついています。

例文: 彼女はパーティーに出かけるため、念入りに身仕舞いをした。

べべ (べべ)

着物を指す幼児語や女性語。特に、子供が着る可愛らしい服や、女性が日常的に着用する着物を指して親しみを込めて使われます。地域によっては「びり」(最下位)を意味する場合もあります。

「べべ」という言葉は、幼児語としての響きから、親しみやすさや愛らしさを伴います。古くから用いられており、子供の衣服や女性の着物を指す際に使われてきました。衣服が持つ機能性だけでなく、それを通じて表現される親密さや、対象への愛情といった感情的な側面を日本語が捉えていることを示します。

例文: お気に入りの赤いべべを着て、お人形遊びをした。

一張羅 (いっちょうら)

その人が持っている衣服の中で、最も良いもの、または唯一持っている晴れ着を指します。例えば、特別な日や改まった場所へ出かける際に着用する、とっておきの服です。

「羅(うすもの)」が薄い絹織物を指すことから、元々は薄手の晴れ着一枚を意味していました。転じて、最も上等な服、あるいは他に代わるものがない唯一の服という意味になりました。

かつての日本において、人々が多くの衣服を持たず、特別な一着を大切にしていた生活様式を反映しています。現代においても、大切な場面で着る「とっておき」の服として、その価値が継承されています。

例文: 彼は卒業式に、一張羅のスーツを着て出席した。

ぞろり (ぞろり)

多くのものが一続きにつながっている様子。また、和服をだらしない感じに着崩しているさま、あるいは場違いにはでな衣装を着ているさまを表します。例えば、行列が長く続く様子や、着物の裾をひきずるように着ている姿などが該当します。

「ぞろり」は、視覚的な連続性や、衣服の着こなしにおけるだらしなさ、あるいは過剰な華やかさを表現する擬態語です。特に和服の着こなしにおいては、その着崩し方が、その人の品格や気風を映し出すとされました。単なる物理的な状態の描写に留まらず、その背後にある社会的な評価や美意識の基準を暗示し、着物の裾の長さや着こなしが品位や態度を示すという文化的な側面を反映しています。

例文: 彼女はズボンの裾をぞろりとひきずって歩いていた。

衣擦れ (きぬずれ)

歩くときなどに、着た着物の裾などがすれ合うこと。また、その際に生じるかすかな音を指します。特に、絹の着物が擦れ合う音は、優雅さや色気を表現する際に用いられます。

「衣擦れ」は、着物の素材と動きが織りなす音という、聴覚的な美意識を捉えた言葉です。絹の着物が主流であった時代、その衣擦れの音は、着る人の品格や、その場の雰囲気を演出する重要な要素でした。この言葉は、単なる物理的な音の描写にとどまらず、その音から連想される優雅さ、繊細さ、あるいは色気といった感覚的な美を表現し、日本の美意識が、視覚だけでなく聴覚にも深く根ざしていることを示唆しています。

例文: 廊下を歩く彼女から、かすかな衣擦れの音が聞こえてきた。

はだける (はだける)

衣服の襟元や裾が開いて乱れること。または、手足を大きく広げる様子。例えば、寝ている間に布団がはだける、あるいは着物の胸元がはだける場合などに用いられます。

「開ける」とも書き、衣服が本来あるべき形から開いてしまう状態です。意図しない乱れや、開放的な状態を指します。

衣服の着こなしにおける「乱れ」が、その人の無防備さや、時には色気を表現しうることを示しています。着物文化の日本において、衣服の乱れが持つ意味合いは深いといえるでしょう。

例文: 寝返りを打った拍子に、布団がはだけてしまった。

かなぐり捨てる (かなぐりすてる)

身につけているものを荒々しく取って放り出すこと。また、比喩的に、恥や外聞、自制心などを全部捨て去ること。例えば、怒りのあまり上着を乱暴に脱ぎ捨てたり、あるいは体面をかなぐり捨てて懇願したりします。

「かなぐり」は「金(かな)具(ぐ)」の音便で、金具で固定されたものを力任せに外す、あるいは乱暴に投げ捨てるという意味合いを持つ動詞「かなぐり」に由来します。物理的な乱暴な行為から、精神的な抑制や体面を捨て去る比喩へと転じました。この表現は、感情の爆発や、極限状態における人間の行動を力強く描写します。自制心を捨て去るという行為によって、その人の強い決意や、追い詰められた状況が想像されます。

例文: 彼は怒りのあまり、上着をかなぐり捨てて部屋を出て行った。

裾捌き (すそさばき)

和服で動く際の、裾(すそ)の取り扱い方。着物の裾が歩く時に乱れたり絡んだりしないような足こなしや歩き方を指し、転じて、立ち居振る舞い全般の優雅さや巧みさを意味します。

着物の裾は長く、歩行時に絡まったり乱れたりしやすいため、それを巧みに操る技術が求められました。この技術が、その人の立ち居振る舞いの美しさや品格を決定づける要素とされました。

和服文化において、単なる着付けだけでなく、その後の「着こなし」や「身のこなし」がいかに重要であったかを示しています。裾捌きの良さは、その人の教養や品位を映し出すものとして評価されました。

例文: 彼女の優雅な裾捌きは、見る者を魅了した。

裾を払う (すそ を はらう)

この表現は、相撲の決まり手の一つで、相手の足を払って倒す技を指す意味と、着物の裾を払うようにして、その場を立ち去る、関係を断ち切る、といった比喩的な意味合いも持ちます。

相撲の技から転じて、物理的な行動が、人間関係や状況からの「離脱」や「清算」を象徴するようになりました。特に、きっぱりと関係を断ち切る際に多用されます。

相撲の技という具体的な行動が、抽象的な関係性の終焉を表現する比喩へと拡張されています。

例文: 彼は過去との関係をきっぱりと裾を払った。

褄取る (づまどる)

裾の長い着物の褄(つま:裾の角の部分)を手でつまんで持ち上げること。歩行時に裾が地面に触れないように、あるいは優雅に見せるために行います。また、芸者が左褄を取って歩くことから、芸者になることを意味する場合もあります。

着物の褄を物理的に持ち上げる動作が、その人の身分や職業、あるいは優雅な振る舞いを表現しています。特に芸者の褄取りは、その職業の象徴的な動作でした。

着物の着こなしが、その人の社会的役割や美意識、さらには生き方を表現する重要な手段であったことを示し、物理的な動作が、社会的な意味合いや美学的な価値を帯びる典型例です。

例文: 彼女は雨の中、着流しの裾を褄取って歩いた。

衣紋を直す (えもん を なおす)

衣服、特に和服の襟元が乱れたのを整えること。着崩れを直すことを指します。

「衣紋」は着物の襟を胸で合わせたところを指し、そこが乱れないように整えることは、身だしなみを重んじる日本の文化において重要でした。この表現は、外見を整えることが、その人の品格や礼儀を示すという日本の美意識と深く結びついています。単なる物理的な修正ではなく、社会的な規範に沿った振る舞いを意味する大和言葉です。

例文: 彼は面接の直前に、衣紋を直して身だしなみを整えた。

抜き衣紋 (ぬきえもん)

和服で、首のまわりの襟を後ろに押し下げて襟足が広くのぞくようにする着方。現在では女性の着方として一般的であり、優雅さや色気を表現します。

「抜出し衣紋」とも呼ばれ、襟足を抜くことで首筋を美しく見せる着付けの技法です。日本の伝統的な美意識において、女性の首筋が美の象徴とされたことを反映しています。単なる衣服の着付け方法に留まらず、女性の身体の特定の部位を強調し、優雅さや色気を演出する美学的な意味合いを持ちます。

例文: 彼女は抜き衣紋の着物で、その場の視線を集めた。

端折る (はしょる)

ある部分を省いて短く縮めること。特に、話や説明の一部を省略することや、着物の裾をまくり上げて帯に挟むことを指します。

「端折る」は、物理的に物の端を折る動作から、情報や手順の「省略」へと意味が拡張されました。話の文脈では、簡潔さや効率性を重視する際に用いられますが、ややくだけた表現のため、目上の人には使わないのが好ましいでしょう。

情報伝達における効率性と、それに伴う表現のカジュアルさを示すと同時に、着物の着こなしにおいては、作業のしやすさといった実用的な側面を反映しています。

例文: 時間がないので、説明は要点を端折って話します。

たくし上げる (たくしあげる)

衣服の袖や裾などを、手で引き上げる、まくり上げる動作を指します。例えば、水仕事をする際に袖をたくし上げる、あるいは泥道を歩く際にズボンの裾をたくし上げる。

「たくし」は「手繰り」に通じ、手で引き寄せるようにして上げる動作。実用的な目的のために衣服を調整する行為です。身体活動や作業の効率性を高めるために、衣服を調整するという日常的な行為を具体的に表現し、その背後にある目的意識や、生活の中での知恵を想起させます。

例文: 彼は腕まくりをして、シャツの袖をたくし上げた。

しごく (しごく)

この言葉は、動詞の「しごく」で使われることは稀で、多くは副詞の「至極(しごく)」として用いられます。副詞の「至極」は、その状態・程度がこれ以上はないというところまでいっているさま、きわめて、まったく、という意味です。例えば、「至極ごもっとも」のように、非常に道理にかなっていることを強調します。

「至極」は、極限や極致に達していること、この上ないこと、きわめて道理にかなっていること、至当であること、他人の意見をもっともだと思って従うことといった意味も持ちます。物事の程度や質が最高点に達していることを強調する際に用いられ、日本語における強調表現の一種です。

例文: 彼の意見は至極当然のことだった。

揉み立てる (もみだてる)

激しくもむこと。また、しきりにうながす、せきたてる、激しく攻めたてる、いらだたせる、といった意味を持ちます。例えば、神輿を激しく揉み立てて盛り上げる、あるいは人をせきたてて急がせる。

「揉む」は、手でこする、揺り動かす、乱すといった意味。それに「立てる」が加わることで、その行為が激しく、あるいは盛んに行われることを強調します。物理的な動作が、感情や状況を煽り立てる、あるいは促進するといった抽象的な意味へと拡張され、集団の熱狂や個人の感情の昂ぶりを表現する際に用いられます。

例文: 祭りの参加者たちは、神輿を激しく揉み立てた。

絡げる (からげる)

縄やひもなどで束ねてくくること。また、衣服の裾の一部をまくり上げて帯などに挟むこと、すなわち、はしょることを指します。例えば、引っ越し荷物をひもで絡げる、あるいは雨の中を走るために着物の裾を絡げる。

「絡げる」は、物理的に何かを縛る、まとめる動作を指します。衣服の文脈では、実用的な目的のために裾をまとめる行為を意味します。物理的な行為が、物の整理や、身体活動の準備といった実用的な目的と結びつき、また、着物の着こなしにおける機能性とそれに伴う身体の自由度を表現しています。

例文: 彼女は水仕事をするために、着物の袖を絡げた。

襷がけ (たすきがけ)

たすきをかけること。また、その姿。ひもや縄などを斜めに交差させてかけること。さらに、子供の髪置きの祝いに用いる麻苧(あさお)を指したり、人事制度の一つを意味する場合もあります。

「たすき」は、和服の袖が邪魔にならないように、両袖を背中で交差させて結ぶ紐のこと。作業をする際に袖をまとめるために用いられます。物理的な動作が、作業への準備、活発な行動、あるいは特定の儀礼や制度を象徴し、慣用句として日常に溶け込んだ一例です。

例文: 彼女は家事をするために、たすきがけにして袖をまとめた。

鉢巻き (はちまき)

主に日本において、精神の統一や気合の向上のために用いられる頭に付ける細長い布あるいは紐を指します。頭の鉢(横周り)に巻くものという意味で、運動会や祭りの参加者、受験生などが着用します。

鉢巻きは、非日常の象徴とされ、神事や祭りの際に多用されています。また、頭痛の緩和や、汗止めといった実用的な目的も持ちます。

単なる頭部の装飾品に留まらず、精神的な集中、士気の向上、あるいは特定の役割や集団への帰属意識を示す文化的な記号として機能し、歌舞伎における役柄ごとの鉢巻きの色や締め方の違いは、その象徴性をさらに深めています。

例文: 選手たちは必勝の鉢巻きを締めて、試合に臨んだ。

姉さんかぶり (ねえさんかぶり)

婦人の手拭いのかぶり方の一つ。手拭いの中央を額にあて、その両端を左右から後ろへ回して、一方の端をさらに頭の上にのせて挟むかぶり方。主に掃除や日よけのために用いられます。

「姉さん」という言葉が示すように、かつての女性が日常的に行っていた、かいがいしく働く姿を連想させます。このかぶり方は、実用性と、それに伴う素朴な美しさを兼ね備え、伝統的な女性の労働と、それに伴う身だしなみの工夫を表現しています。単なる頭部の覆いではなく、女性の生活様式や役割を象徴する意味合いを持ちます。

例文: 彼女は姉さんかぶりをして、庭の掃除を始めた。

頬かむり (ほおかむり)

顔の頬を覆うようにして手拭いや布をかぶること。主に、寒さや埃よけ、あるいは身分を隠すために用いられます。また、見て見ぬふりをする、知らんぷりをする、といった比喩的な意味合いも持ちます。

物理的に顔を覆う動作が、身分隠しや、あるいは責任回避といった心理的な態度を表現します。特に、後者の意味では、都合の悪いことに気づかないふりをする、という日本の社会における間接的な対応を暗示しています。

物理的な行為が、その人の意図や社会的な状況への対応を表現する中で、特に、見て見ぬふりをするという比喩的な意味は、日本のコミュニケーション文化における「察する」ことの重要性や、直接的な対立を避ける傾向を反映しています。

例文: 彼は不正に気づいていたが、頬かむりをして何も言わなかった。

けわい (けわい)

化粧をすること。また、化粧によって作られた顔つきや表情。特に、女性が美しく見せるために施す化粧を指します。

「けわい」は「気配」とも通じ、顔に施すことで雰囲気を変えるという意味合いを持ちます。古くから女性の美意識と深く結びついてきた言葉です。化粧が単なる外見の装飾に留まらず、その人の雰囲気や印象、さらには内面的な変化をもたらすものであるという日本の美学を表現し、化粧が持つ変身の力や自己表現の手段としての役割を示唆しています。

例文: 彼女は入念にけわいを施し、舞台に上がった。

眉をひく (まゆ を ひく)

眉墨などで眉の形を整えたり、描いたりすること。化粧の一部として、顔の印象を整えるために行われます。

「ひく」は線を引く、描くという意味。眉は顔の印象を大きく左右する部位であり、眉を整えることは化粧において重要な工程でした。化粧の技術が、顔の印象を操作し、その人の美しさを引き出し、眉の形が、その人のその時の気分や性格までを表現するという考え方を反映しています。

例文: 彼女は鏡に向かって、丁寧に眉をひいた。

紅をさす (べに を さす)

口紅を塗ること。特に、女性が唇に紅を塗って、顔色を明るく見せたり、華やかさを加えたりします。

「紅」は、赤色の顔料、特に唇に塗るものを指します。唇に紅をさすことは、顔全体を明るく見せ、女性らしさや魅力を引き出すための伝統的な化粧法です。化粧が、顔色を整えるだけでなく、その人の表情に生命感や華やかさを与えるという美学的な意味合いを持つことを示し、唇が持つ象徴性や、美の表現におけるその役割を反映しています。

例文: 彼女は鏡の前で、鮮やかな紅をさした。

髪を撫でつける (かみ を なでつける)

髪の毛をブラシや手でなでて、きれいに整えること。特に、髪をぴたりと頭に沿わせるように整える際に用いられます。

「撫でつける」は、上から下へ、あるいは前から後ろへ、髪を整然と押さえつける動作を指します。乱れた髪を整え、清潔感やきちんとした印象を与えるために行われます。

髪型がその人の印象を大きく左右するという日本の美意識を反映し、品格や社会的な態度を示すものであることを示唆しています。

例文: 彼は面接の前に、髪を丁寧に撫でつけた。

髪をすく (かみ を すく)

櫛(くし)やブラシで髪をとかすこと。髪のもつれを解き、整える。

「すく」は、櫛で髪をとかす動作を指します。髪を清潔に保ち、美しく見せるための日常的な手入れです。髪の手入れが、その人の美しさを保つ上で不可欠な行為であることを示し、美意識や清潔感を表現する重要な要素であることを反映しています。

例文: 彼女は毎朝、丁寧に髪をすいてから家を出る。

お櫛上げ (おぐしあげ)

女性が髪を結い上げること。特に、結婚式や成人式など、特別な機会に髪を整えることを指します。また、女性が年齢を重ねて、髪型を変える節目を指すこともあります。

「櫛上げ」は、櫛を使って髪を高く結い上げる動作。女性の髪型が、その人の年齢、身分、あるいは社会的な役割を示す重要な要素であったことを反映しています。髪型が単なる装飾に留まらず、女性の人生の節目や社会的な変化を象徴し、伝統的な美意識と、女性のライフステージが密接に結びついていることを示唆しています。

例文: 娘の成人式には、美しい振袖と共にお櫛上げをしてもらった。

鬢 (びん)

髪の毛の、耳の横のあたり。特に、女性の髪型で、こめかみから耳のあたりにかけてふくらませた部分を指します。

「鬢」は、顔の輪郭を美しく見せるために、特に女性の髪型で重要視された部分です。その形や膨らませ方によって、その人の美意識や流行が表現されました。髪型の細部がその人の美しさを引き出し、個性や時代性を表現する重要な要素であることを示しています。顔の印象を特徴づける髪の毛の特定の部分に焦点を当てるという、繊細で高い美意識が感じられます。

例文: 彼女は鬢をふっくらとさせて、優雅な印象を与えた。

別嬪・別品 (べっぴん)

特別に美しい女性を指す言葉。容姿が際立って優れている女性を褒め称える際に用いられます。

「別嬪」は、「別品」とも書き、他の人とは「別」格の「品」格を持つ、という意味合いから、抜きん出て美しい人を指すようになりました。外見的な美しさが、その人の価値や魅力を決定づける重要な要素であったことを示しています。美の基準が、言葉としてどのように表現され、継承されてきたかを物語っています。

例文: 彼女は町でも評判の別嬪さんだった。

細面 (ほそおもて)

顔の輪郭が細く、卵型で、すっきりとした顔立ち。上品で知的な印象を与える顔立ちを指します。

「細面」は、顔の形に関する美的基準の一つです。細く整った顔の輪郭が、優雅さや知性を連想させるものとして評価されました。顔の形が、その人の印象や性格を表現する重要な要素であるという日本の美意識を反映し、特定の顔の輪郭が持つ美学的な価値を示唆しています。

例文: 彼女は細面の顔立ちで、どこか儚げな雰囲気を持っていた。

瓜実顔 (うりざねがお)

瓜の種のように、やや面長で、額から顎にかけての輪郭がなだらかな卵型の顔立ち。日本の伝統的な美人の顔立ちとして知られています。

「瓜実顔」は、日本の古典的な美人の典型的な顔立ちを表現する言葉です。額が丸く、頬がふっくらとして、顎が細くすっきりしているのが特徴とされます。

時代ごとの理想の美が、特定の比喩(瓜の種)を用いて言語化され継承されてきたことを示しています。美意識が自然物になぞらえて表現されているのは、自然を神と崇め自然と一体となった生活を営んできた日本ならではでしょう。

例文: 彼女はまさに絵に描いたような瓜実顔の美人だった。

玉肌 (たまはだ)

きめ細かく、つややかで、透き通るような美しい肌。若々しく、健康的な肌の形容。

「玉」は宝石のように美しいもの、貴重なものを意味し、肌の美しさを最大限に褒め称える言葉です。肌の質感が、その人の美しさや若々しさを決定づける重要な要素であったことを示し、肌のきめ細かさや透明感が、美の基準として重視される日本の美意識を反映しています。

例文: 彼女の玉肌は、多くの女性の憧れの的だった。

緑の黒髪 (みどり の くろかみ)

水に濡れた烏の羽のように、真っ黒で青味のあるつややかな髪の形容。日本の伝統的な美人の髪の毛の理想です。

「緑」は、ここでは「青々とした」という意味で、生命力や若々しさ、そして深い色合いを表現します。漆黒でありながらも、光の加減で青みがかって見えるような、豊かな艶を持つ髪を指します。髪の毛の色や艶が、その人の美しさを決定づける重要な要素であったことを示し、日本の美意識が、自然の色合いや質感に美を見出す豊かさを持っていることを表しています。

例文: 彼女の緑の黒髪は、日本の伝統的な美を象徴していた。

垢抜ける (あかぬける)

洗練されて、野暮ったさがなくなること。服装や容姿だけでなく、振る舞いや雰囲気全体が都会的で粋になること。

「垢」は汚れや野暮ったさを意味し、それが「抜ける」ことで、洗練された状態になることを表現します。単なる外見の変化だけでなく、その人の内面的な成長や、社会的な経験を通じて得られる品格をも含みます。

外見と内面が一体となった「美しさ」の概念を日本語が捉えていることを示し、洗練された振る舞いや雰囲気が、その人の魅力を構成する上でいかに重要であるかを意味します。

例文: 彼女は留学から帰ってきて、すっかり垢抜けた雰囲気になっていた。

小股の切れ上がった (こまた の きれあがった)

女性の脚が長く、スラリとして粋な様子。特に、着物からちらりと見える膝から下の脚が長くスラリとしていることを言います。颯爽とした、活動的な女性の美しさを表現する場合に用いられます。

「小股」は股の付け根や膝の上を指すなど諸説あるが、着物から見える膝から下の脚が長く、引き締まっている様子を指すのが一般的です。女性の身体の特定の部位が、その人の活動性や「粋」といった美学的な価値と結びついていることを示し、単なる身体的な特徴だけでなく、その人の気風や振る舞いをも含んだ美意識を表現します。

例文: 彼女は小股の切れ上がった、颯爽とした女性だった。

鯔背 (いなせ)

粋(いき)で、勇み肌で、さっぱりしているさま。また、その容姿や、そういう気風の若者を指します。特に、江戸時代の町人文化の中で育まれた、威勢がよくて小気味よい男性の気風を表現します。

「鯔(いな)」は魚のボラの子を指し、その活きの良さや、江戸の魚河岸の若者の髪型「鯔背銀杏(いなせいちょう)」に由来します。外見だけでなく、その人の気風や生き様が、その人の魅力を構成する上でいかに重要であったかを示し、江戸の町人文化における男性の理想像を表現する言葉です。

例文: 彼は鯔背な兄貴分で、皆から慕われていた。

伊達者 (だてもの)

見栄を張ったり、粋に装ったりすることにこだわる人。特に、服装や振る舞いが派手で、人目を引くことを好む人を指します。また、「男伊達」のように、男としての面目を立て、信義を重んじる気風を持つ人にも用いられます。

「伊達」は、見栄を張る、粋に装う、という意味。戦国武将の伊達政宗の派手な装いから来たという説もあります。外見や振る舞いが、その人の個性や美意識、あるいは社会的な立場を表現する重要な手段であったことを示し、派手さだけでなく、その背後にある美学や「男気」といった内面的な価値をも含む場合もあります。

例文: 彼は常に最新のファッションを身につけ、街の伊達者として知られていた。

【まとめ】

「大和言葉お洒落よそおい編」の語句は、日本の伝統的な装いや美意識が、当時の生活様式、社会規範、そして美の基準を深く反映していることを示しています。「衣擦れ」や「裾捌き」は、着物が発する音や動きの優雅さを重視する日本の美意識を示唆し、「抜き衣紋」や「端折る」といった着付けの技術は、実用性と美学が融合した伝統的な知恵を反映しています。

また、「垢抜ける」や「鯔背」「伊達者」といった言葉は、単なる外見だけでなく、洗練された振る舞いや気風といった内面的な要素が、その人の魅力を構成する上でいかに重要であったかを示唆しています。これらの言葉は、外見と内面が一体となった「美しさ」の概念を日本語がどのように捉えてきたかを物語ります。

日本語の慣用句や大和言葉は、単なる語彙の集積ではなく、日本人の身体性、感情、そして文化的な価値観が複雑に織りなす豊かな表現体系であることが再確認されたといえるでしょう。これらの言葉を深く理解することは、日本語の習得に不可欠であるだけでなく、日本文化の深層を洞察するための重要な鍵となります。言葉の背後にある文化的背景や、身体と感情の密接な連動性を認識することで、より nuanced なコミュニケーションが可能となり、異文化理解の深化にも寄与するでしょう。本報告書が、これらの言葉への理解を深め、日本語の奥深さを探求する一助となることを期待します。

error: Content is protected !!