九鬼文書とは?
『九鬼文書(クカミモンジョ)』は、古代出雲王朝の正統性を主張する古史古伝の一つです。九鬼家の遠祖である天児屋根命(アメノコヤネノミコト)の時代に記録された神代文字の原文を、藤原不比等が漢字に書き改めたもので、九鬼一族が保管したとされています。
もともと神代文字で書かれていた古文書で、九鬼のカミは「鬼」の漢字の上の角部分が無いカミという漢字を使用していました。しかし一般には見られないことから便宜上「鬼」という漢字を当てて、「九鬼(くき)」と呼ばれるようになった経緯があります。
九鬼一族とは
『九鬼文書(クカミモンジョ)』を代々所有している九鬼家は、初代の隆真氏(たかざね)が後醍醐天皇時代の1336年、天皇が幕府軍に追われる際に、幕府側の追っ手と戦い、三種の神器を護り通した戦いぶりが「カミの如し」と称され、代々縁のある九を付けて「九カミ」の姓を賜わりました。九鬼一族の海上輸送の働きあってこそ、足利幕府の時代にも南朝が50年続いたと言われています。
9代の九鬼嘉隆は戦国時代の水軍大名として秀吉の朝鮮出兵の総督を務め、熊野から志摩半島へ渡り5万5千石を領していました。しかし、関ケ原以降、九鬼の水軍を怖れた家康によって丹波の綾部と摂津の三田に分断されます。このうち、綾部の九鬼家が『九鬼文書』を保管してきました。
九鬼文書の概要
2025年現在、発表されている九鬼文書は、大まかに以下の9編に群別されます。
- 「神代略」「神代系譜」「天地言文」等の歴史秘録
- 「大中臣神字秘遍」「九鬼字秘遍」等の神代文字関係
- 「鬼門祝詞」「天津古止文」「天津蹈鞴秘文」等、神道の精髄を伝える文書類
- 「天真宗門総秘論」「天津金木」等、大中臣家伝来の卜占秘法
- 「九鬼神伝天真兵法天門地門遍」「九鬼柔体術活法遍」「九鬼神流系譜」等の兵法
- 「中臣秘宝遍所載神医法」や薬草・精神医療・鍼灸法等の病理医薬
- 「金剛秘法遍」「金剛蜜法遍」「三蜜法力遍」等、熊野修験道や密教関係
- 九鬼文書の筆録関係者の伝記、紀州九鬼一族関係者紹介
- 九鬼家秘蔵の新宝目録
ここでは、上記「1」、歴史秘録について紹介していきます。九鬼文書「天地言文」の壮大な時空スパンは、三浦一郎の『九鬼文書の研究』によると、以下のように区分されています。
- 第一期 造化準備作用時代 (創造神・モトツワタラセノ大神の時代)約23000年
- 第二期 造化時代 (アマツミヒカリ大神~アメノミナカヌシ大神)約50000年
- 第三期 修理固成の神皇時代 (アメノミナカヌシ大神~イザナギ天皇)約20000年
- 第四期 万国統治神皇時代 (アマテラスニイマス天皇~ヒコホホデミノ天皇)約8000年
- 第五期 ウガヤフキアエズ時代 約 1200年
- 第六期 神武天皇時代~
現代宇宙論と一致する年代比率
|
|
注目すべきは、何もなかったとされる時代から地球誕生(第一期~第三期)までのそれぞれの時代区分における年代の比率です。
l 第一期 23世約23000年
l 第二期 13世約50000年
l 第三期 12世約20000年
それぞれの数値は~万年、~万~千年ですが、当時、万以上の桁が存在しなかったため、八百万を無限のやおよろずと読むように、悠遠な時間の表現として用いたと推測されます。しかし、驚くべきことに、この数値を各時代区分ごとの比率に置き換えると、現代宇宙論のビッグバン~地球の誕生に至る時間比率と比較的近いことがわかります。
| 九鬼文書 | 現代宇宙論 | 比率概算 |
| 第一期 23000年 | ビッグバン 50億年 | 2.3 |
| 第二期 50000年 | 銀河創成 107億年 | 5 |
| 第三期 20000年 | 地球誕生 45億年 | 2 |
九鬼文書~神統譜
| 九鬼時代(期間) | 期間(概算) | 主要な始祖 | 主要な終結者 | 主題的焦点(九鬼文書の主張) |
| 第一期:幽玄混沌の神皇時代 | 23,000年 | 創造神・モトツワタラセノ大神 | アマツミヒカリ大神 | 天地未分離の混沌期。無から生じる原初神(例:天之御中主神の原型) |
| 第二期:造化の神皇時代 | 50,000年 | アマツミヒカリ大神~ | アメノミナカヌシ大神 | 造化の神皇時代 |
| 第三期:修理固成の神皇時代 | 約20,000年 | アメノミナカヌシ大神 | イザナギ天皇 | 最初の宇宙秩序と基盤の確立(修理と確固たる確立)。 |
| 第四期:万国統治神皇時代 | 約8,000年 | アマテラスニイマス天皇 | ヒコホホデミノ天皇 | 普遍的な神聖統治と地球規模の統治(万国統治)。 |
| 第五期:ウガヤフキアエズ時代 | 約1,200年 | ウガヤ初代(系譜の連続) | ウガヤ第73代 | 神代と人間による皇統の接続を実現する過渡期(73代の継承)。 |
この区分は、『古事記』の神生み・国生みを拡張し、各期を「12世×12代=144代」のような数秘術的パターンで繰り返します。出雲王朝(スサノオ系)を正統とし、大和王朝(アマテラス系)を後継と位置づけ、両統迭立(交互統治)を主張します。ユダヤのモーセやノアの名が登場する異文化融合も特徴です。




