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しあわせを呼び込む日本のならわし②|甘茶と土用丑・旬の食材で不老長寿【HOW TO JAPAN】

日本文化
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縁起担ぎが好きというよりは、何事につけ肯定的ポジティブシンキングな日本人。どんなに悪賢い相手に対しても誠意を尽くして善処を求める寛容さを持ちます。呑気なお花畑と揶揄されることもありますが、そんなことは百も承知。今日も寛大な心であらゆる変化を受け入れて幸せの習わしに身を委ねます。生きることがどういうことかを知っている国民ならではの美意識の一つです。

今回は、そんな寛容な国民の幸せの習わしから、甘茶と土用丑、旬の食材を大切に戴く不老長寿の願いについて解説します。

お釈迦様の誕生を祝う甘茶

日本の伝統行事の中で、しあわせを呼び込むとされるものの一つに、お釈迦様(仏陀)の誕生を祝う「花まつり」があります。この行事は毎年4月8日に行われ、お釈迦様の誕生を祝うことで参加者に平和と幸せが訪れると信じられてきました。甘茶には魔除けの力があるとされ、幸せを呼び込む象徴ともなっています。

甘茶の定義と用途

甘茶は、山紫陽花、もしくはその変種の葉を発酵させた日本の伝統的なハーブティーです。タンニンとフィロドゥルシンという甘味成分を含み、砂糖の400〜800倍の甘さを持ちます。お茶として飲むことはもちろん、カフェインを含まないため、化粧品の材料や入浴剤、生薬として、あるいは口腔清涼剤の製造原料など幅広く使われています。

甘茶の効果

薬理作用としては抗腫瘍や抗アレルギー作用、抗菌作用などの報告があります。また、民間療法の一環として、胃弱・食欲不振・利尿・口臭除去や糖尿病患者の甘味代用飲料として用いられることも少なくありません。

花まつりの起源

花まつりは、仏陀(釈迦牟尼)の誕生を祝う行事で、日本では6世紀の仏教伝来の頃から始まったとされています。元々、農家の方々が桜の開花を愛でながら五穀豊穣を祈る習慣があり、時期的に重なることから仏教の伝統と融合しました。この行事は「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれ、英語では「Buddha bathing party」と表記されます。

儀式の詳細

花まつりでは寺院の敷地内に花壇が設けられ、色とりどりの花で飾られます。花園の中央の水盆に赤ちゃんのような仏像が置かれ、参拝者は甘茶を仏像にかけて参拝します。甘茶を振りかけるのは、お釈迦様がこの世にお生まれになったとき、天から降り注いだという「甘い雨」を再現して誕生日を祝福するためです。

儀式に参加した参拝者は、その場で甘茶を飲んだりお土産として持ち帰ることもできます。

花まつりの文化的意義との甘茶によるしあわせ

花まつりの儀式には龍の伝説も関連しています。八大龍王や九頭龍などが登場することもあり、仏教と神道の融合と調和が、さらなる加護と幸運をもたらすとされています。古来の信仰と外来宗教との共存こそ、今日の日本の発展であり、豊かな精神性の現れでしょう。

また、甘茶の効能は身体的な面だけでなく、甘茶で呪文を書いて門に吊るすと魔除けになるなどのスピリチュアルな効果も注目されています。甘茶の甘さは、生命の甘美さや純粋さを象徴するとされ、しあわせを呼び込むといわれています。

土用丑の日に「う」のつくものを食べる

土用とは、中国の五行思想に基づく季節の変わり目の準備期間であり、特に夏は暑さで体力が落ちやすい時期とされています。土用丑の日は、夏の土用期間(立秋の前約18日間)中の丑の日に当たる日で、2025年は7月19日(一の丑)と7月31日(二の丑)です。日本では、栄養価の高い食品を摂取することで夏バテを防ぐ習慣が根付き、土用丑の日に「う」のつくものを食べるようになりました。

「う」のつくものを食べる由来

土用丑に「う」のつくものを食べる習慣の起源は古く、『万葉集』に収められた大伴家持の下記の一首から始まったとされます。

石麻呂に われ物申す 夏痩せに良しといふ物そ 鰻取り食めせ」

この歌は、大伴家持が、痩せていた石麻呂に夏バテにはウナギがいいぞ!とからかいつつ勧めている様子を詠んでいます。少なくとも奈良時代(710-794年)には鰻が夏の栄養源として認識されていたようです。

また、真偽は不十分ですが、江戸時代には平賀源内が鰻屋の売り上げを伸ばすために「丑の日に鰻を食べると薬になる」と振れ回ったとの説もあります。

主な食べ物とその効果

「う」のつく食べ物は、夏の疲れを癒し、体力を回復させるために選ばれています。以下に主な食品とその効果をまとめます。

食べ物効果・特徴
うなぎビタミンA、B群、タンパク質が豊富で夏バテ防止に最適。
うどん消化が良く、冷やしうどんとして夏に適す。ミョウガやシソと合わせることも。
梅干しクエン酸含有で疲労回復、さっぱりとした味わい。鰻と一緒に食べても安全。
水分補給、カリウム豊富で体温調節に役立つ。
土用しじみオルニチン含有で肝機能サポート、体力回復。
土用たまご栄養価高く、江戸時代から夏バテ防止に食べられた。
牛肉、馬肉タンパク質補給、エネルギー源として有効。
黒ごま、黒豆抗酸化作用、食物繊維豊富で健康維持に役立つ。

これらの食品は、夏の暑さで失われがちな栄養素を補給し、体力を維持するために選ばれています。特に鰻は関東では背開き、関西では腹開きで調理され、地域差も見られます (All About).

地域差とその他の風習

地域によっては、うなぎ以外にも土用餅(あんころ餅)や土用干し(梅干しを作る際の乾燥作業)が行われます。また、土用の丑の日は土公神を敬うため、土を動かす作業を避ける風習もあり、間日(卯、辰、酉の日)に行う地域も少なくありません。入浴の際、湯船に桃の葉を入れて健康を願うこともあります。

文化的意義と現代の変化

この習慣は、家族や地域コミュニティで健康を祈る象徴的な行事であり、現代でも夏のスタミナ食として親しまれています。ただし、近年では鰻の資源枯渇問題から、うなぎ以外の「う」のつく食品を食べるケースも増えてきました。

鰻以外の主な食べ物には鰻、うどん、梅干し、瓜などがあり、それぞれが夏の健康維持・スタミナ補給に役立ちます。

旬の食材で不老長寿

日本の伝統的な習慣「初物七十五日」では、旬の食材、特にその季節の最初に収穫される「初物」を食べると寿命が75日延びると信じられています。この諺は、福を呼び込む行為として地域で受け継がれています。

初物七十五日の定義と背景

「初物七十五日」(はつものしちじゅうごにち)は、季節の最初に収穫される食材(例:初鰹、初鮭、初きのこ、初茄子、俗に「初物四天王」と呼ばれる)を食べると寿命が75日延びるという日本の諺です。この諺は、単なる食事習慣ではなく、福を呼び込み、幸せを招く象徴的な行事として地域で受け継がれてきました。

起源と75日の基準

この習慣は、江戸時代に死刑囚が季節外れの食材を最後の食事として頼み、入手までの75日間寿命が延びたという話が起源とされます。

江戸時代は、刑の執行を控えた死刑囚の最後の望みは叶えてあげるという情深い制度がありました。これに対し死刑囚は、今すぐには手に入らない食材を食べたいと懇願します。今のように一年中、あらゆる食材が手に入る時代ではないので、その食材の初物が出回るまで75日間待たなければならなかった、という話です。

本来は「初物を食べるまで75日長生きできた」わけですが、噂が広まるうちに「初物を食べると75日長生きできる」と変わっていきました。

また、75日という数字は実際の日数ではなく、長い期間を象徴的に表すものです。「人の噂も七十五日」(うわさは75日で消える)という諺もあります。

地域差と食べ方

初物を食べる際には、地域によって独特の風習があります。たとえば関西では東を向いて笑いながら食べる(「東笑い」)のが一般的です。これは「東の方角が吉兆である」と信じられてきたことによります。東日本では西を向いて食べる地域もあり、 また、一部の地域では初物はまず祖先に供えられます。

効果と日本人の自然観

現代では、「初物七十五日」は単なる諺としてではなく、健康的な食生活の重要性を象徴する言葉としても捉えられています。  栄養学的にも、 旬の食材は新鮮で、ビタミンやミネラルが豊富です。特に初物は収穫直後なので、栄養価が最も高いとされています。これにより、体調を整え、長寿を促進する効果が期待できます。

初物を食べることは、季節の変わり目を祝い、自然との調和を重視する日本の文化を反映しています。この習慣は、単なる食事行為を超え、時の移ろいを慈しむ日本人の自然観が繁栄されています。日本人は、脳で食べたい物を考えるのではなく、今この時期に何を身体に摂り入れるのがいちばんよいのか、身体が何を欲しているのかを自然と体得してきたのです。。

代表的な初物の種類

初物として店頭を賑わす有名な食材を紹介します。

食材季節特徴
初鰹(はつかつ)初夏(5-6月)栄養価が高く、鮮度が良い
初鮭(はさけ)秋(9-10月)タンパク質豊富、風味が良い
初きのこ秋(9-11月)ビタミンD豊富、抗酸化作用
初茄子(はなす)夏(7-8月)水分が多く、夏の疲れに効果的

これらの食材は、地域の市場や家庭で初物として祝われ、感謝の意を込めて食べられます。

福を呼び込む「初物七十五日」

「初物七十五日」は、旬の食材(特に初物)を食べると寿命が75日延びるという日本の伝統的な諺であり、福を呼び込む習慣として受け継がれてきました。

栄養学的な効果はもちろん、日本人の自然との調和や季節感を重視する文化を反映し、単なる食事習慣以上の深い意味を持っています。

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